「円の動き」と「和の心」

元本部道場師範 八段 藤田昌武

 

 合気道が目指す修業の理想(目的)は、自分の心と体の調和、相手と自分との調和、自分の動きと宇宙(自然)の動きとの調和を求める事にある。

 カラダは元気で、ココロは平和。人と争わず、自然を損なわず、逆らわず、力で望まず、対すれば相和す、まさに宇宙との和合を目指す武道、それが合気道である。

 力と力のぶつかり合い、これを争いという。合気道は力と力をぶつけない。争わない。力と力を結ぶ、力と力の和を求める。力と力の和が転化され、そこに合気道の技が生まれる。

 合気道に一貫して流れている思想は、争わない事を貫き通すことである。本来、武の心とは争わないで済ますことにある。

 合気道の技は「円の動き」。円く円くさばく円の動きは争わない。激しい対立をまとめる円の力、相対の因縁動作を円に抱擁する、相手を傷つけず、殺さずに制する動きは、円の動きしかない。

 今、合気道は、合気道を単なる武術・武道としてのみとらえるのではなく、日本固有の文化として、あらゆる面に展開し、数多い日本文化の中で最も日本的な伝統と特色をもったユニークなものであり、世界に通ずる日本の心として紹介されている。

 世界に通ずる日本の心とは、全てのものに調和をもたらす原理、それは「和の心」であり、それが真(まこと)の日本思想である。日本精神は、対立闘争の思想ではない。日本の国が大和の国といわれるように、大和(だいわ)のこころ、和の精神が国是なのである。どの国、どの時代にも通ずる、人の歩むべき誠の道を示すものといえよう。日本が本来持っている「日本の心」を合気道でしっかり一つ一つ積み重ねて実践して行こう。