形について

元本部道場師範 八段 藤田昌武

 

 武道の目的は、いかに合理的に相手を制するかにあります。
 全ての武道には、基本というものがあり、ここから形が生まれます。
 形は、身体につたえる無形の文化財であります。そのためには、無形であるが人間にとって一つの道具である技を磨くことです。
 武道における形は、全く世界に類をみない日本武道の華といえます。
 形は、武道において身体を活動させることによって、技の原理を具体的にすがたとして表現したもので、これは繰り返し繰り返しやっているうちに一つの定まったかたちができて、これを学習するのが稽古であります。
 合気道の稽古法は、技の伝え方である形といわれる伝統的な教習方法を行い、形を尊重し、形に従うことを大切にしています。
 合気道には、競技試合がありませんので、勝利のための能力というより、毎日の技を学ぶ過程を尊び、その形を正しく繰り返し繰り返し反復して学び、内面に掘り下げていくことが稽古の意義でもあると考え励んでおります。
形を修行して、技の基本を知るわけですが、合気道は相手を傷つけず、殺さずに制する技法を中心に技を組み立てて体系化したものです。
 その鍛錬法として、世界に類のない座技、そして立技、半身半立技、武器技とあります。
 形の稽古を通じて「わざ」を磨き、「心」を練る、人間形成の鍛錬法として広く多方面に推奨されております。
 合気道の特色は、相手の暴力のみを制して、相手の生命を殺傷いたしません。人間の生命尊重の時代に最もふさわしい武道といえます。
 心身鍛練の道として独特の動きを持つ合気道が、老若男女を問わず、子供、婦人、老人達まで非常に広い年齢層にわたって誰でも一緒に行えます。その大衆性 や、それが生涯を通じて行える求道的性格、また心と体の健康法として効果があるばかりでなく、生活安全能力の向上と現代に欠かせないものを持っておりま す。
 合気道が日本ばかりでなく、世界各地に広がっているのは、合気道の根本精神に大きな共感を得ているからと申せましょう。
 世界に伸びる人間交流の絆として、合気道が更に世界各国にその裾野を広げていくことは、人類の平和と繁栄の実践につながる最も新しい人類共有の文化といえます。
 これが来たるべき二十一世紀に大きく合気道が期待される所以であります。
 ちなみに、日本文化の中で、世界に一番普及しているもの、愛好されているもの、それが武道です。