沢庵漬と三代将軍家光

   空腹なら何でも美味しい (鎌田茂雄著:沢庵珍話集より)

 

 ある時のこと、家光は沢庵和尚を相手に四方山の話をしていたが、

 「和尚、余は何物を食しても味がなくて困るが、何か口に合うような美味ものでもあっ   たら、余に馳走をしてくれぬか」とおおせられた。和尚はこれを聞いて、

 「それはいと易きこと、明日、巳の刻、愚僧の休息所へおいでをねがいまする。」と申し上げると、家光大喜びで「イヤイヤそれは一段の馳走である、しからば明日巳の刻の時までに、和尚の許へ参るであろう」と御殿に戻りました。

 翌日になると家光は小姓を二、三名つれて、庭づたいに和尚の許へやってきました。時は十二月の下旬、朝より雪がチラチラと降り出し、もう一面の銀世界、将軍はこの雪をおしてご馳走を食べたい一心でやって来ました。

 「おお和尚か、降り積もる雪はまた一段の眺めじゃの・・・・」

 「上様には豊太閤の徳あり、昨日御約束つかまつりましたるとおり、天下無双の美味をさしあげまするでございましょう」と、茶室へと案内してしばらくお待ちと、和尚はそのまま自分の居間へ引き下がってしまいました。家光はこの景色を眺めつつも、和尚は今日何を馳走してくれるかと、しきりに待ち焦がれている、ところが待てどくらせどもいっこうに和尚は見えない。巳の上刻というのですから、今でいえば朝の十時。その時分から待たしておいて昼になっても和尚は出てこない、三時頃になってもまだ見えない。さすがの家光、少し癪にさわってきました。

 「和尚はどうしたか」       「ハッ」

 「かくも手間取るとなるところを見ると、調理がよほどむずかしいものと見えるな、いつもなれば余は中座を致すのじゃが、今日は和尚との約束がある、されば中座はできぬ、早く持参をすればよいが」と、なき面をしています。腹をすかしてもう目が回りそうにもなってきました。小姓の一同も生唾をのみこんで、のどをグイグイいわせています。

 ところへ八つ半頃、今日でいうなれば三時にもなろうという頃、やっとのことで和尚がそれへとでてきました。

 「はなはだ遅刻つかまつりまして恐れいりまする、沢庵手製の料理、何卒御賞美下されまするよう」とそれえと差し出しました。膳には黄色で四角な一寸四方ばかりに切ったのが二つ小皿にのって、それに椀が添えてあるばかりで他には何もありません。小姓の方もやはり同じで小姓どもは顔を見合わせて、「何だこの四角で黄色いものは」といぶかってぶつぶつ・・・・・

      このつづきは正月明けの腹の減った頃に    お楽しみに・・・・

 

 

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