生きる

 

名画劇場「生きる」

 

                         昭和27年度

               東宝創立20周年記念作品

     監督  黒沢  明

     主演  志村  喬

       

 

 

 あれからもう三十年も過ぎ去ってしまったのだろうか…黒髪もふさふさとして二枚目の好青年だった私(愛気チャン)は、枯葉舞う冬の木枯らしの中で、コートの襟を立てながらふと銀座のとある映画館の前で立ち止まった。

「♪~命 みじか~し 恋せよ 乙女~赤い 唇び~る あ~せぬままに~♪」 

スピーカーから流れるこの哀愁ある歌に引き込まれるように私はいつしか映画館の椅子に腰を沈めていた。モノクロのスクリーンいっぱいに志村喬(今は亡き)ふんする市民課長がブランコの上でこの歌を口ずさみながら死んでいく・・・実はこの課長、ニックネームが「ミイラ」。この課長には生きた時間が無かった。三十年間無遅刻・無欠席で一度も休暇をとることも無かった。ただ忙しいだけで意欲や情熱は何も無かった。住民の要望は各課にたらい回し、結局は自分の椅子を守るだけで何もしなかった。つまりこの課長、時間を潰しているだけで生きているとはいえなかった。つまり生きた屍だったのである。

 ある日この課長、胃の不快感を覚え病院に行く。重いように胃が痛み、げっぷが出、水やお茶ばかり飲みたがる。診断の結果、胃潰瘍と医者に告げられたが実は胃がん。長くて一年の命・・・・医者のただならぬ気遣いに胃がんと悟り、病院から帰る道すがら重く痛む胃を押さえながら酒場で酒をあおっていく。

 「ああ~私は今まで何の為に生きてきたのだろうか…」と自問自答する。だんだんと自分に腹が立ってきた。

この男、たまたま酒場で知り合った小説家に自分はガンであると告白する。同情した小説家が「私はつまらない小説を書いているつまらない男ですが、不幸は人間に真理を与える。つまりあなたの胃がんはあなたに目を見開かせた。さあ~あなたの無駄に使った人生を取り戻しましょう…あなたは胃がんという十字架を背負ったキリストだ。胃がんと宣告されてからあなたは生き返ったのです。」

 そしてこの小説家、この市民課長を今まで味わった事の無い甘美な世界に連れ出す。パチンコ・バー・クラブ・そしてストリップにと快楽の世界に浸らせる。今までと違った人生を知った市民課長、「私は今まで三十年間、役所で何をしてきたのだろうか?妻に先立たれ息子を男手一つで育てるためだけにただ頑張ってきた。その息子にも邪魔者にされ退職金だけをあてにされるような始末。

 「そうだ、遅くはない。やる気になれば私にだって何か出来る。」

そして夕空を見上げ「ああ…美しい。実に美しい。この夕焼けがこんなに美しいなんて三十年間気がつかなかった。しかし私には時間が無い・・・・」

 

(続く)  

   

  次回は石原師範の講習会が終わったら送信します。         

                      お楽しみに

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